賛否両論な”修復後”の《窓辺で手紙を読む女》
修復前の余白があった絵の方が良かったのに!
と思うませんか?自分はそうでした。
しかし!実際に今回の企画展で実際に観ると…
キューピッド以外にも見えてくるものがありました!!
フェルメールを復習

- オランダ画家(他にレンブラント、ハルス、ライスダール)
- 室内画、風景画、寓意画が主
- 現存作が40点に満たない
- 細やかで柔らかい光の処理と色の調和
- ポワンティエ(点描画法):牛乳を注ぐ女、窓辺で手紙を読む女
- カメラ・オブスキュラ:赤い帽子の女
- 独自の宝石のような輝き
- ラピスラズリ:真珠の耳飾りの少女、青衣の女、牛乳を注ぐ女
- 静穏な画面:牛乳を注ぐ女、デルフトの眺望、窓辺で手紙を読む女
- 遠近法:牛乳を注ぐ女、天文学者、天秤を持つ女、真珠の首飾り
- トロンプ・ルイユ(だまし絵):絵画芸術、信仰の寓意、窓辺で手紙を読む女
- 流れる飴:レースを編む女、絵画芸術、窓辺で手紙を読む女
企画展のポイント
- 所蔵館以外で修復後、世界初公開
- 隠されたキューピッドが出現
- 作品を覆う古く黄ばんだニスと汚れを落とした

キューピッド出現の経緯
- X線調査でキューピッドの画中画の存在が判明
- 当時はフェルメール自身が上塗りしたと考えられた
- 作品保存のため溶媒による古いニス層取り除き作業開始
- 画中画上塗り部分だけ溶媒の反応が違った
- 絵具を科学調査
- 上塗り塗料はフェルメールが亡くなった後だと判明
- 上塗りの除去が決定・継続
- 2021年9月、ドレスデン絵画館でお披露目
- 2022年1月、東京都美術館で所蔵館以外世界初解禁!
キューピッドについて

- モティーフは「恋」
- 仮面(嘘・欺瞞)を踏みつける⇒誠実な愛の勝利
- 女性が読むのは思い人からの手紙
- 他の作品にも描かれている(自身の所有物の可能性)

その他の特徴

- 消失点(遠近法)は女の頭の後ろあたり
- 窓ガラスに映る女の顔から立体感を表現
- 緑色のカーテン:奥行き、だまし絵、覗き見る効果
- ポワンティエ:光の粒による事物の強調
- 詳細に描かれた織物や果物皿が陰影効果で主張を抑える
- 格子扉の窓の青と窓にかかる赤いカーテンが補色関係
- 耳から流れ落ちる髪⇒レースを編む女、絵画芸術につながる
- 女の衣装が「紳士とワインを飲む女」の色違い
- 奥の格子扉が開いているのは初期の本作と「士官と笑う女」のみ
カーテンレールが隠された?
修復後の原画と共に修復前の複製画も展示され、
見比べることができるのですが・・・
(・・???
原画のカーテンレールがない?なんで??

近くの係員の方に聞いてみました。
「カーテンレールは額によって隠れている」
「原画の方は当時展示されていた状態に戻している」
とのことでした。
どうやら、当時額で隠されていた部分は
見せるための部分ではなく、濃淡のムラがあるばかりの
隠れるべきところに何者かが加筆していたようです。
修復の感想:作家と編集者
黄ばんだニスや汚れを落としたことにより、光の粒(ポワンティエ)や
緑のカーテンや織物、窓の格子扉(フェルメール・ブルー)の色彩が
より際立ち、フェルメールの持ち味がわかりやすくなったと感じました。
一方、キューピッド出現に対しては自分は否定よりです。
- 頬の紅潮から恋と推測できる
- “引き算の美学”が失われる
- 覆水盆に返らず(キューピッド出現は複製画で再現してほしかった)
特に”引き算の美学”に関しては、
茶道や和歌などの「わび・さび」の精神に通じるため、
フェルメールは日本人に愛されているのだとよく聞きます。
絵に余白をつくることで閑寂さ、と奥ゆかしさを
感じることができていたと思います。
ド素人の考えなのですが、キューピッドが何者かによって隠されたのは
画家と画商・所蔵側の関係が書籍でいうところの
作家と編集者だったのではないかと考えています。
要するに《窓辺で手紙を読む女》は編集者(画商・所蔵側)が
当時人気のあったレンブラントの作品よりに筆を入れた(余白にした)
のではないか。
編集者がフェルメールの良さをどうすれば引き出せるか考え、
上塗りされたものが評価され、今のフェルメール作品を
傑作にまで押し上げているとするなら。
この作品自体、ドレスデン絵画館で美術品数点を購入したオマケ、
つまり無料で手に入れたものだということでした。
当時の流行・美的感覚に合わせるため上塗りしてはじめて作品として、
価値があるものとして成立したのではないかと個人的に思っています。
隠された他作品

上記3つの作品はX線写真から上塗りがわかっています。
今回はドレスデン絵画館:ドイツが上塗りの除去に踏み切ったので、
もしかするとベルリン美術館:ドイツ所蔵の
《真珠の首飾り》がもしかすると...
いずれにしても上塗りが何かの拍子に科学調査され、
フェルメール以外の作業だと判明した場合には、
それぞれの美術館が判断に迫られるわけです。
ビクビク怯えてしまいます:;(∩´﹏`∩);:
どうか、そのままにしてくれー(泣)
もんぞ(寝言)みたいな日記
自分はキューピッド出現にはそこまでショックを受けませんでした。
それよりも修復による色彩の鮮明さが蘇り、フェルメールの画風が
確立し始める初期作を直に感じることができて感激でした。
オランダ行きて~な~
観に行こうと思っている方は予約が必須レベルですよ!
予約も土日・祝日は予約開始当日には残数少(汗)
当日枠もありますが午前11:00入場時点で16:00以降の枠のみ、
13:30には完売してました~(;”∀”)

今回は東京都美術館企画展 ドレスデン国立古典美術館所蔵
「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」の
《窓辺で手紙を読む女》まとめと感想でした!
せばまんず、まだな~\(゜ロ\)(/ロ゜)/

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